格子エネルギーとは 格子エネルギーは、イオン結晶をそれを構成するイオン(相互作用のないガス状のイオン)に解離するのに要するエネルギーとして定義される。格子エネルギーは熱力学的にはイオン結晶の生成エンタルピーや溶解エンタルピーなどと関係するばかりでなく、イオン結晶の融点などとも密接な関係を示す。 NaCl型、ZnS(閃亜鉛鉱)型など、イオン間距離が正確に格子定数と関係しているようなイオン結晶では、結晶のポテンシャルエネルギーはイオン間距離の関数として(1)式ような単純な関係式で表すことができる。 ここで、Ecは静電(クーロン)相互作用による項、Er は量子力学的な電子雲の重なりによって生じる近接相互作用の反発交互作用の項である。格子エネルギーは平衡状態におけるポテンシャルエネルギーの極小値の絶対値として表すことができる。すなわち、(2)式で与えられる。 Er の格子エネルギー全体に及ぼす割合は高々10%程度であるので、格子エネルギーの大部分はクーロン相互作用から成り立っている。(1)式で表すことができる単純結晶では、マーデルング定数Mは幾何学的な考えにより結晶型ごとに求めることができるので、格子エネルギーは、従って、近接相互作用のEr を除くと、格子定数と構成イオンの価数だけで決定することができる。
これに対して、一般的なイオン結晶では、陽イオンと陰イオンとの距離は格子定数に対して単純な関係ではないので(1)式は使えない。イオン結晶のポテンシャルエネルギーを求める一般式は(3)式で与えることができる。
ここで、Erについては種々の式が提案されている。たとえば、次の(4)〜(7)式が代表的なポテンシャルの式として有名である。 LatEnergyでは最後の完全イオン性2体ポテンシャルを採用している。静電ポテンシャルEcを求める方法として、Fourier法、Ewald法などがある。LatEnergyではこの2つの方法でEcを求めている。 |
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