W-2 占有率等の変数の計算設定の仕方


ここでは、
 ●二つの元素が一つのサイトを共有している。
 ●同一元素が異なるサイトにあり、占有率が分配されている。
 ●予測挿入サイトが多くあり、元素挿入の分配の可能性がある場合
 ●二相共存(異なる物質が混合)での解析
等の計算設定を行う際の操作方法を説明する。

 逆スピネル構造を持つZnMgSnO4について解析した例を説明する。この物質はすでに報告されている同じ逆スピネル構造を持つZn2SnO4とMg2SnO4との固溶体とみなせる。空間群はFd-3m(227)、Z=8である。この固溶体では、(Zn1-xMgx)t[ZnxMg1-xSn]oO4として表すことができるとした。ここで、( )tは四面体の8aサイト、[ ]oは八面体の16dサイトを表す。したがって、8aサイトには2種類、16dサイトには3種類の元素が存在する。

@ ICSDデータベースにあるZn2SnO4とMg2SnO4との座標値を参考にして[Atomic Parameter]の構造パラメータの初期値を作成する。ここでは、8aサイトにある元素をZn-tとMg-t、16dサイトのそれをZn-o、Mg-o、Sn-oとしている。
A 最初の計算段階では、これらの化学種の席占有率を全て0.5で固定し、さらに熱振動パラメータも0.5に固定して計算する。
B その後、Zn-t、Mg-t、Zn-o、Mg-oの席占有率を可変(変動制御部で1を入力する)、また熱振動パラメータの全てを可変にする。
C 追加された二つのLiサイトの占有率の和が1なのでこれを考慮した計算をしなければならない。ここで、(Zn1-xMgx)t[ZnxMg1-xSn]oO4の組成式より、Mg-tの席占有率をgとするとそれぞれの化学種の席占有率は、
   Mg-t -> gx(Z/8)=g
   Zn-t -> (1.0-g)x(Z/8)=1.0-1.0xg
   Mg-o -> (1.0-g)x(Z/16)=0.5-0.5xg
   Zn-o -> gx(Z/16)=0.5xg
   Mg-t -> 1x(Z/16)=0.5
にある。ここで、式中の8と16は8aと16dに対応している。そこで、これらの関係式の入力を[Atomic parameters]のCondition of Constraintの[Edit]で使って行う。下の図では、既に入力が終わっているが、最下部のテキスト欄に条件式が記述されているのがわかる。
D [Edit]ボタンを押すと下の図のウインドウが表示される。 ここでは、Mg-tの席占有率が精密化されるとしている。

 (1) RefinedのParam.として[occ]を選択し、その下の[Items]のMg-tを選択する。
 (2) ConstrainedのParam.として[occ]を選択し、その下の[Items]にあるZn-t、Mg-o、Zn-oについて前の式に従って条件を設定する。ここでは、Mg-oについて具体的に見てみよう。 
 ・[Items]としてMg-oを選択する。
 ・Mg-o -> (1.0-g)x(Z/16)=0.5-0.5xgの式より、下にある[Constrained Param.=]のテキスト欄に-0.5と0.5を入力する。
 ・その下の[Add]ボタンを押すと [Constraints List]に条件式が示される。
 (3) 他の2つの化学種についても同様に条件を入力する。
 (4) 熱振動パラメータの制約条件については、Zn-tとMg-tのB、およびZn-o、Mg-o、Sn-oを共通すにする必要がある。この場合、Param.としてBを選択して、[Constrained Param.=]のテキスト欄には1.0と0.0を入力すればよい。([Constraints List]参照)
 (5) またこの例では、酸素は32eの特殊位置(x,x,x)にあるのでOのyとz座標はx座標と共通にしている。この条件の入力に仕方はご自分で試していただきたい。 
E 最後に[Ok]ボタンを押すとうこのWindowが閉じて、その結果がCの最下部のテキスト欄に反映されるとともに、制約条件が課されたパラメータのID欄に2が入力される。

● 二相共存で行う場合

[File]→[Import Template File]→[Two Phase X-ray file](X線データの場合)か[Two Phase Neutron File](中性子回折の場合)を選択し、デフォルト値を読み込ませてから、必要な値や設定を行い、精密化すると良い。

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